東京タワーが見えますか。 --- 江上 剛 --- (単行本)

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※ 表題に続いて書かれているのは「初出」

東京タワーが見えますか。:『東京タワーが見た日本 1958-2008』

町工場で育った銀行員、父と同じ境遇の工場主に「マンションで賃貸事業を」と貸し込んだが過大な建設費負担に耐えきれず支払不能そして競売、すべてを失った元工場主。そんな銀行に嫌気がさして父の零細工場を継ぐ。

ある男の人生:小説現代2011年10月号

東京で一流企業の「東都電力」の広報担当を努めていた男の話。原発の機器故障や不具合を何年にもわたって隠蔽していた事が公となって広報担当は社会部記者に揉みくちゃにされた。そんなことから会社を辞めた。
その男の事を「私」が幸せな顛末になる小説として書いた。新潟県燕市へ行き、洋食器の磨き職人になって別れた妻や子供と再会させる・・・

この時期に原発事故に絡ませた小説とは時宜を得た題材だった、と言っていいのかな?

大過なく:小説現代2011年11月号

銀行の総務部特命担当次長の顛末。上司からの指示で働いたが問題勃発、「大過なく」が口癖の上司は助けてくれなかった。本人は大過有りで退社、小さな会社務めを定年で終え、元上司に殺意を抱く。

座敷わらし:小説現代2010年9月号

デパートのスポーツ用品売り場担当からいくつもの会社を渡り歩いた男、他の目には見えない「座敷わらし」が見えていた。

爺捨て山騒動記:小説現代2011年4月号

一番のお気に入り作品だ。
20XX年、政府は、年金や健康保険財政の破綻に伴いついに65歳で定年になったサラリーマンを生命的に追放する法案を可決した。「若年企業勤務者処遇改善、年金及び健康保険財政の破綻防止、維持、健全化のための企業勤務者定年後の処分法」と言う法案。
絵空事かな??あと少しだわ。

まだまだ:小説現代2010年4月号

1985年から2005年にかけて、パロマ製瞬間湯沸器を原因とする一酸化炭素中毒事故が相次いで発生した。
2010年5月11日 - 東京地裁で生命の危険を伴う製品を提供する企業として、多くの死傷事故を認識しながら修理業者への注意喚起では不十分、製品回収などの抜本対策を怠ったなどとしてパロマの前会長小林被告と元品質管理部長被告に有罪判決が言い渡された、云々。
これを題材にしたのだと思う。



2012年6月14日 第1刷発行
発行所 講談社